前橋市医師会が5年間にわたって行った、インフルエンザ予防接種に関する調査の報告書です。

かつて日本では、小学生などを対象に、世界でも珍しいインフルエンザの集団予防接種が強制的に行われていました。感染拡大の源である学校さえ押さえれば、流行拡大は阻止できるのではないかという「学童防波堤論」を根拠としたものです。しかし、どんなに予防接種を打っても、インフルエンザは毎年決まって大流行しました。

こうしたなか、1979年の初冬、群馬県の前橋市医師会が集団予防接種の中止に踏み切りました。直接の引き金は予防接種後に起きた痙攣発作の副作用でしたが、この伏線には、以前から予防接種の効果に強い不信感を抱いていたことがあったのです。そして、ただ中止しただけではありませんでした。予防接種の中止によって、インフルエンザ流行に一体どのような変化が現れるのか、開業医が中心になって詳細な調査を始めました。予防接種中止の決断は正しかったのか、あるいは間違っていたのかを検証するためです。

そして、5年に及んだ調査は、前橋市医師会の判断が正しかったことを裏付ける結果となりました。つまり、ワクチンを接種してもしなくても、インフルエンザの流行状況には何の変化も見られなかったのです。この調査をきっかけに、予防接種を中止する動きが全国に広がり、最終的には、厚生省も事実追認の形で1994年に任意接種に切え替えました。


私たちは、この資料が研究者だけを対象に書かれているとは思っていません。むしろ、医学的には素人の親が、予防接種を考える際に、是非とも読んでもらいたい資料だと考えています。例えば、以下のようなことを考えるうえで、非常に有益な示唆が得られると思います。

また、由上修三『予防接種の考え方』(大月書店、ISBN-4272401521)も併せて読んでみれば、より理解が深まると思います。

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