日本脳炎の専門家ヒヤリング会議議事録
まつ/父親
2004/10/19
厚生労働省から、7月23日に行われた「日本脳炎に関する専門家ヒヤリング会議」の議事録が公開されました。読んでみるとなかなかおもしろいので、ポイントだけ紹介しておきます。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/07/txt/s0723-5.txt
■感染症情報センターの黒部さん
・1989年にワクチン株が変わり、そのころを境に日本脳炎患者数が大きく減少した。
・ワクチン接種者の方が非接種者よりも抗体価が高い。また、非接種者のなかにも陽性者が存在する。
・日本の豚の抗体陽性状況は南に行いくほど高い。また、暑い夏ほど高くなる。
■長崎大学熱帯医学研究所の森田さん
・日本脳炎には5タイプあり、日本では、それまでのタイプ3から1990年代半ばにタイプ1に置き換わっている。
・こうしたタイプの置き換えは、鳥が媒体となって東南アジアからウイルスが運ばれたことによって起きている可能性が高い。
・現在のタイプ1はタイプ3よりも弱毒であると考える人もいる。
・馬の抗体を調べると、九州地区に行くほど自然感染率が高いことが分かっている。
・人間の自然感染率は、愛知では1.5%、九州では3.7%と推計されている。ただし、個人的には、もっと高いという印象を持っている。
■富山県衛生研究所の渡辺さん
・日本脳炎患者が減少した理由として4点考えられる。
・第1は、コダカアカイエカの減少。ただし、これは大都市圏の話であり、地方では減少していない。
・第2は、蚊に刺される機会の減少。
・第3は、コダカアカイエカの発生のピークが従来の6〜7月から8〜9月に後ズレしていること。
・第4は、コダカアカイエカ自身によるウイルス保有が少なくなったこと。これはウイルスのタイプが3から1に変わったことが影響している可能性もある。
■立教大学社会学部教授の大矢さん
・(副反応は)実はこういうふうに不確かなデータの下に、大部分は神経の専門家が診断をつけたものだから、信頼はできるかも分からないけれどもということですね。
・(ADEMなど副反応統計は)これがどこまで本物かということは分からないという、こういうふうな形で集まったデータでございます。
■予防接種情報ふくおかさん
・1992年以降、患者が減っているのは、予防接種対象年齢層だけでなく、高齢者についてもあてはまる。
・罹患者がいない都道府県については予防接種の必要性はない。また、都道府県内でも地域ごとに必要性を詳細に検討することが必要。
・接種事故も多い。開業医のアンケートでは、接種間隔の間違えが25%、回数の間違いが5.7%であり、集団接種ではこれ以上に高くなると思われる。
・親に配られる「予防接種と子どもの健康」には副反応例としてADEMなどの記載がない。
・医師の予防接種ガイドラインにはADEMの記載はあるが、アナフィラキシーについては記載がない。
■福岡県立西武療育センターの宮崎さん
・ADEMはウイルス・細菌・真菌・原虫などが原因で起こるが、仕組みはよく分かっていない。
・ADEMは、後遺症を残すケースも多いが、脳炎・脳症より死亡する確率は低い。
・ADEMの頻度は、人口10万人あたり年間0.3〜0.6人程度とみられる。
・年齢別に見たADEMのピークは6〜7歳。
・季節別に見たADEMは、夏から秋にかけて多く、9月、10月、11月と増えていく。
■フリーディスカッション
・1970年代、百日咳は「幻の疾患」と言われていたが、三種混合を中止したとたん大流行してしまった。だから、患者数が減少したという理由だけで、予防接種を中止すべしという考え方は疑問だ。
・日本脳炎ウイルスがどこで越冬しているかは分かっていない。また、コダカアカイエカもどこで越冬しているか分からない。両方とも、東南アジアから侵入しているかもしれない。
・日本脳炎ワクチンの効果はあると思う。人口100万人のうち10万人が自然感染し、不顕性感染率を1000分の1とすれば、そのうち100人が発症する計算だが、実際の患者数はずっと少ない。
・18歳以上では、ほぼ全員が日本脳炎の抗体を持っている。一方、3歳ごろではほぼゼロ。つまり、この間に、何らかの形で自然感染しているようだ。
・一般的なADEMの発生確率は100万人に対して3.8人。それに対して、予防接種後のADEMは400万人に対して6例だから、決して多いとはいえない。
・コダカアカイエカおよび日本脳炎は、どこか1カ所を起源として、急速に日本全国に拡大していると考えている。
・リスク要因として、蚊の大発生には注意すべき。特に、今年の福井・新潟の大洪水などの後には、必ず蚊が大発生する。
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