Re: 本質的なこと
一小児科医
2005/3/2
皆さんたくさんのレスどうもありがとうございます。
もっと批判の意見が多いと思っていたのですが、
案外好意的な意見が多かったのは、正直意外でした。
理解して下さる方がいるという事は勇気づけられます。
> オススメの本はありますか?取り急ぎ、親はどういうことを知っていたらいいのでしょうか?もっと言えば、お医者様としてはどういうことは知っていて欲しいですか?
申し訳ありませんが、一般書店で販売されている本に関しては
あまりわかりませんので、お勧めできるような本はないのです
が、読売新聞の医療と介護のページは結構有用な記事が多いと
思います。私も時々コピーを患者さんに渡すことがあります。
(著作権法は無視しております・・・)
医者として知っていてほしいこととしては、言い訳に聞こえる
かもしれませんが、
1 人間(医師も患者も)は精密機械ではありません。
当初の予測(医師)と違う経過を示す(患者)場合も
当然ありえます。
例えばほとんどの風邪に抗生物質は無効であると最近
日本呼吸器学会が指針を出していますが、反対にとれば
ごく少数の風邪は抗生物質が有効な場合もあります。
マイコプラズマ感染症や溶連菌感染症などがそれに
あたります。今朝から咳と鼻水と発熱があると外来に
来る場合、最初の時点で判断できない場合もあります。
とりあえず最初は抗生物質無しに経過をみて、改善傾向
がないので検査をして原因が判明したとします。
そんな時親御さんから、こんな事になるんだったら
どうして最初から抗生物質を出しておかなかったのか
と責められると、こんな思いをするくらいなら何も
考えずに最初から抗生物質を出しておく方がいいやと
考える医者も多いと思います。私の印象では本来真面目で、
心優しい患者思いの医者ほどそういう傾向があるようにも
思えます。(傷つきやすいんですね。私と違って 笑)
2 初めて高熱を出して病院に来る子どもの親御さんなどは
強い不安を持って病院に来ている場合が多いです。
そういう親御さんに対して、ぐったりしてしんどそうな場合
には解熱剤を使うことが必要なこともあると説明はするの
ですが、もしこの薬を使った場合、最悪の場合には全身の
皮膚がずるむけになって失明したり、最悪の場合には死亡
する場合もあるので、よく理解した上で使ってくださいとは
正直言いにくいです。そう言われた親御さんはこどもは
しんどそうだし、かといって薬を使うと副作用が出る可能性
があるし、家に帰ってから余計に混乱すると思います。
副作用の事は黙って、薬を処方する事も正直あります。
それで万が一副作用が出て、責められると、正直立つ瀬が
ないです。
最近小さな手術の場合でも病院では同意書をとるのが
当たり前になっています。ようするに万が一想定外の事が
起こっても責任がとれない場合があるから理解しておいて
下さいねという責任逃れの書類なのですが・・・
そのうち外来で風邪薬を出すのにも同意書をとる時代が
来るのかもしれませんね。そうなってくると正直医者と
患者の間の信頼関係もあったもんじゃないなと暗い気持ちに
なりますが、医者は副作用が出たといって責められることは
少なくなり、患者も本来知らなかった副作用の機会を知る
ことができると思えば、案外同意書をとるのも悪くはない
かもしれませんね。
少数でも応援して下さる患者がいるということがわかったので、
これからも必要な薬はいる、いらない薬はいらないといえる医者
でいたいと思います。
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