インフルエンザとタミフルに関する2つの社説
かばきち/母親
2005/11/15
ちょっと長くなりますが、今日の朝刊から、インフルエンザとタミフルに関する社説を、毎日新聞と東京新聞(中日新聞)で見つけましたので、引用しておきます。
ここの掲示板で色々議論されていることが、語られていると思います。
毎日新聞は、亡くなられたお子さんのお母さんの記事も出ていた新聞で、タミフルを慎重に扱ってほしいということを伝えています。
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「タミフル 副作用の可能性十分伝えよ」
インフルエンザの抗ウイルス薬「リン酸オセルタミビル」(商品名タミフル)を服用後、異常行動を起こして死亡した人が2人いることがわかった。建物から飛び降りたり、トラックにはねられるなど、衝撃的な事故だ。
タミフルはここ数年、日本で大量に使用されている。昨シーズンは600万人に処方されたとの推計もある。厚生労働省は鳥のウイルスが変化して出現する新型インフルエンザに備え、2500万人分を備蓄する計画を進めている。
多くの人が使う可能性がある薬だけに、異常行動死との因果関係が気にかかる。
死亡例以外にもタミフル服用後に異常行動や意識障害、幻覚、妄想などの精神・神経症状が起きたケースが90件以上把握されている。これらの症状は昨年5月から医師向けの添付文書に副作用として記載されている。
医薬品に副作用はつきものではあるが、一般にはそうした症状が表れる可能性は知られていない。異常行動といわれても、飛び降りなどにつながる恐れがあるとは想像がつかない。
医師や薬剤師はタミフルを処方する際に、こうしたリスクの可能性も含め、副作用情報をわかりやすく患者に伝えてほしい。知っていれば患者側も心構えができる。
ただ、タミフルと異常行動の因果関係は否定されていないが、確実ともいえない。インフルエンザそのもので意識障害などを起こすケースもある。
新型対策として備蓄される薬である以上、厚労省や製造元のロシュ社、輸入元の中外製薬などは副作用情報の収集により力を入れてもらいたい。タミフルと異常行動の因果関係を正確に把握するための調査も必要だ。
日本はタミフルを使いすぎだという声もある。確かに、他の国に比べて突出している。インフルエンザは高齢者など免疫力が低下している人にとっては命取りになることがあり、甘く見ることはできない。だが、タミフルの効果は発熱期間の短縮や重症化の防止であり、特効薬ではない。不要な人もいる。
インフルエンザの予防には手洗いやうがい、ワクチン接種が重要だ。罹患(りかん)したら安静にして休むことで重症化を防ぎ、ウイルスをまき散らさないことも大事だ。抗ウイルス薬の多用や誤った使い方が、薬の効かない耐性ウイルスの出現リスクを高めることも忘れないようにしたい。
厚労省は14日、新型インフルエンザ対応の行動計画をまとめた。タミフルの備蓄は課題だが、これだけで十分とはいえない。新型が人間の間で流行したときにタミフルが有効かどうかは未知数だ。耐性ウイルスが出現した時の対策も念頭におかなくてはならない。
新型インフルエンザは出現を抑えることが第一の課題だ。出現した場合には流行を最小限に抑える戦略がいる。新型対策は国際的課題であり、日本はアジア太平洋経済協力会議(APEC)での協力体制構築にも力を入れてほしい。
毎日新聞 2005年11月15日 0時17分
東京新聞(中日新聞)は、新型インフルエンザ発生時の対応と、タミフルのこと、昨日発表された国の「行動計画」に対して、分かりやすく意見を述べていると思います。
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「最悪の場合も考えて」
鳥インフルエンザが世界的に流行し、毒性の強い新型インフルエンザに突然変異する危険性が出ている。まだ実際に新型が出現したわけではなく、過度の恐れは控えたいが、備えに万全を。
新型インフルエンザ
現在流行している鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)は、一九九七年に香港で確認された後、アジアを中心に感染が拡大し、ことしになって欧州やロシアまで広がった。
この感染でベトナム、タイなどでは既に多数が亡くなっているが、ウイルスの感染経路は鳥から人が中心だった。
世界中が警戒を強めているのは、最近の感染者は以前見られなかった肺炎など全身症状を示すように病原性が強まっており、突然変異で毒性がさらに強まり、人から人へ感染する可能性が指摘されているからだ。
毎年流行するウイルスと違い「新型」に対する免疫を人は持っていないため感染すると重症化しやすい。
それだけに十分な備えが必要だ。
十四日に厚生労働省がまとめた「行動計画」は、まず抗インフルエンザ薬「タミフル」(商品名)の備蓄強化をあげ、政府と都道府県は二千五百万人分の確保を目指す。そのうち民間にも四百万人分の備蓄を要請する。
ただ、タミフルは既存の抗インフルエンザ薬の中では最も優れており、重症化を防ぐが、期待されるほどの劇的効果はない。服用による副作用も報告されている。ベトナムやわが国では既にタミフルが効かない耐性ウイルスが確認されており、備蓄だけでは安心できない。
予防効果の高いワクチンの開発にも全力をあげてもらいたい。
さらに、被害を最小限にとどめるには、鳥が「新型」に感染しているかどうかを常時監視するサーベイランスの強化や、感染者の早期発見・治療も重要だ。それには各国との情報交換など協力が欠かせない。
とりわけわが国は、鳥インフルエンザの流行地のアジアと交流が多いだけに綿密に連絡を取り合う必要がある。万一、「新型」発生の恐れが現実味を帯びてきたときには速やかに支援したい。それがわが国の被害を少なくすることにもつながる。
十五日から韓国で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の閣僚・首脳会合でも、この問題が取り上げられる。その場で、協力体制を細部まで具体的に詰める必要がある。
「行動計画」は、国内発生時には、その地域での大規模集会の自粛や、事業所・福祉施設で症状の出た従業員の出勤停止の勧告なども打ち出しているが、行き過ぎのないように配慮してもらいたい。
中日新聞・東京新聞 2005/11/15 社説
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