Re5: 麻疹(はしか)の死亡者数
まつ/父親
2004/3/8
こんにちは。
> 死亡率を試算している元論文にはアクセスできませんでしたが、これだけの情報があればもうちょっと調べることができそうです。
調べてみました。
最初に、統計分析を行ううえでの注意点をひとつ。特定の数値を推計するには、なるべく信頼すべき統計をベースにしなければなりません。とある流行時の情報だけから全国ベースの推論をしてしまうと、その流行の特殊性を増幅するリスクが大きくなります。幸い、今回のケースでは、「人口動態統計」という全国民を対象とした統計があるので、この統計を利用することを第一に考えるべきでしょう。
さて、沖縄県で麻疹流行があったのは、1998年8月から1999年9月までの1年間です。人口動態統計を調べると、沖縄県で麻疹が原因で亡くなった人の数は、1998年に1人、1999年に3人と記載されています(ちなみに1995〜1997年はゼロ)。一方、「1998〜1999年に起こった沖縄県での麻疹流行」によれば、そのときの麻疹患者数は2,034人、死亡者数は8人。この論文の数字をベースにすれば、8人の死亡者のうち、4人は死亡診断書が正しく作成され、人口動態統計にカウントされている、と推論できます。つまり、死亡診断書が正しく作成されている割合は50%。したがって、一番信頼すべき人口動態統計から実際の麻疹死亡者数を点推計するには、だいたい2倍すればよい、ということになりそうです。年間20人くらいですね。
ここで注意しなければいけないのは、推計元となっている麻疹流行が沖縄県(とりわけ離島地域)という狭い地域に集中しているという特殊性です。つまり、このケースでは、麻疹対応に関わった病院・医師の数も少ないはず。とすれば、たまたま死亡診断書を正しく作成しない1人の医師が、人口動態統計にカウントされていない4人の主治医だった、という可能性も考えられます。もしそうであれば、死亡診断書が正しく作成されている割合がもっと高くなり、実際の麻疹死亡者数も人口動態統計に近い数字にまで下がってきます。もちろん、逆の可能性もありますが、「たまたま死亡診断書を正確に記載する医師が多かった」なんて考えたくないですよね。。。
なお、さ@かなさんが教えてくれた週刊医学界新聞のページでは、死亡者が9人と1人多くなっていますが、これは2001年の1人が含まれているからと思われます(人口動態統計にもカウントされています)。
ここで、改めて驚くのは、1998年から1999年にかけての沖縄県での麻疹流行時の死亡率の高さです。患者数2,034人に対して8人も死亡したということは死亡率0.4%と計算されます。これは、これまで私が目にしたどの死亡率の数字よりも高いものです。一体なぜでしょうか?
<結論>
1. どうやっても、年間80人という死亡者数は導き出されない
2. 沖縄での麻疹死亡率は非常に高かったので、むしろその原因を追及すべき
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