II.調査研究
3.成績
C.小学校の欠席率によって見たワクチン効果
4)ワクチン有効率に関する検討

問題の在りかを分かりやすくするために,〔図8〕に示すごとく,非接種地区として前橋市を,接種地区として高崎市,桐生市,伊勢崎市の合計をもって対比することとした。

こうすることによって,3市合計の罹患率は全体として,1984年度43.7%,1985年度24.1%と,前橋市と同じくらいの罹患率になった。そして3市合計中の非接種群を対照としたワクチン有効率は,1984年度25.8%,1985年度39.0%となった。

ここで一つの問題点が浮かび上がってくる。それはここにいう非接種群が,対照群としての条件を備えているかということである。何故ならば,集団接種の実際に当たって,接種日当日,日ごろ「かぜ引き易い」など虚弱と見なされる子どもは接種禁忌として外されるに違いないし,普通小学校には5%位のぜん息児がいるものだが,その大半は禁忌とされている可能性があるからである。また1985年度のように,接種日が流行期間の中に入ってしまったような場合には,当日発熱その他の体の異常を訴える子どもは,やはり接種禁忌とされるであろう。その中にインフルエンザ罹患者がかなり含まれる可能性がある。これらの子どもを含む「非接種群」というのは,当然,無作為に抽出された統計的な意味での対照群としての条件は備えていないとみなければならない。要するに異質のグループなのである。そう考えれば,この「非接種群」の罹患率が,前橋市のそれと比較して著しく高いことも説明することが出来る。

ここで,前橋市と3市合計の流行規模が概ね同じくらい,との前提のもとに,前橋市と3市合計の二回接種群の罹患率を比較すれば,その差は1984年度においては2.2%,1985年度では7.4%となり,これによるワクチン有効率は,前者にあっては僅かに5%,後者にあっては27%に低下する。そして,ワクチンはB型がとくに効きにくいとの従来からの論説にも矛盾しない。


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