II.調査研究
3.成績
C.小学校の欠席率によって見たワクチン効果
3)小学生のインフルエンザ罹患状況
〔表11〕〔表12〕に,前項に述べた5市の小学生のインフルエンザ罹患状況を示した。前橋市,安中市はインフルエンザワクチン非接種地域であり,その下の高崎市,桐生市,伊勢崎市はいずれも接種地域である。調査対象者総数は,各市とも在籍者の99%以上を占める。これをさらにワクチン接種区分別に三つの群に分けて,それぞれの罹患者数と罹患率(%)を示した。
〔表11〕は,1984年度B型流行時のものであり,〔表12〕は,1985年度AH3N2型流行時のものである。
全体として見て,罹患率は1984年度は40%台であり,1985年度は20%台で,1984年度の方が流行は大きかったと言える。1984年度の罹患率には最高11.8%の差があり,1985年度には8.1%の差があるが,流行の地域差と見るべき程度のものであり,かつ大きな差とは言いがたい。さらにこれをワクチン非接種地域と接種地域に分けて比較して見ても,両年度において大きな差はない。
しかし,接種地域のワクチン接種区分別各群の罹患率を見ると,「非接種群」「一回接種群」「二回接種群」の順で罹患率は低くなり,もしも一般に広く行われているごとく,「非接種群」を対照群としてワクチン有効率を計算して見れば,高崎市,桐生市,伊勢崎市の順に,1984年度は29%,24%,16%となり,1985年度は40%,29%,36%となる。確かに接種率80%以上の高崎市は有効率が高いが,接種率が60%以下と低い桐生市,伊勢崎市については,接種率や流行規模と一定の関係は認められない。だが公称70%以上と言われるワクチン有効率と比較して,何と低い値ではないかと言わざるを得ない。
しかし問題は,この低い有効率でさえも,そのままワクチン有効率と見なしていいかというところにある。
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