II.調査研究
3.成績
D.HI抗体価によって見た小学校のインフルエンザ流行
6)感染者の流行前抗体価別欠席率・38℃以上の発熱率
〔表22〕は,冬期流行の感染者の流行前抗体価別欠席率および38℃以上発熱率を示したものである。
この表から,個々の流行において,抗体価と欠席率あるいは発熱率の関係は,必ずしも抗体価が高くなるほど低くなるとばかり言えない場合もあるが,全体として見るとき,欠席率も発熱率も抗体価が上昇するとともに低くなる傾向が認められた。
以前の報告において,1983年1月〜2月のA3型の流行および12月から翌年にかけてのA1型の流行に関する資料を元に,感染者の流行前の抗体価と欠席率・発熱率の間には何等相関は見られないと述べたが,全流行について検討の結果,以下のごとく訂正しなければならない。
すなわち,まず感染率は既述の通り流行前抗体価の上昇とともに低下し,感染した者の欠席率や38℃以上の発熱率も同様に低下する傾向が認められる。もしも抗体価<16倍および16倍の者を抗体を保有しない者,32倍以上の者を抗体保有者とすれば,欠席率は前者にあっては67.0%,後者では55.5%,発熱率は前者は49.1%にたいして後者は38.0%であった。すなわち,既往があって感染した者の欠席率および発熱率は,既往のない者に比較していずれも約10%低いという結果であった。
しかし,小学生の場合,38℃以上の発熱があればほとんどが欠席者であるはずだから,感染して欠席した者の38℃以上の発熱率は,流行前の抗体価とは明らかな相関はないことになり,恐らく流行前の抗体価のいかんにかかわらず一旦感染発病すれば病状の程度分布には差はないと推量される。要するに病状程度は,抗体価だけでは決められない,と言うことである。
[前へ-上へ-次へ]