III.われわれの見解
(前文)

ワクチンの効果には二つの側面がある。一つは被接種者個人の感染防禦であり,二つは集団に対する流行阻止である。繰り返し述べたごとく,われわれの関心は児童,生徒に対する集団強制接種の有用性にある。したがって,流行阻止効果が検討の主題である。しかしながら,個人に対する感染防禦効果が十分強力であれば,(例えばポリオのように)それは直ちに流行阻止につながる可能性があるから,両者は全く別個の問題ではない。不幸にして,インフルエンザワクチンの感染防禦効果は不十分であり,その上,インフルエンザは他のウイルス性疾患と異なる特性を持つ流行病である。そのため,感染防禦効果と流行阻止効果を区別して論じなくてはワクチンの有用性を論ずることは出来ない。以上のような事情を踏まえて,インフルエンザワクチン集団接種に対するわれわれの見解を整理しておきたい。


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