鳥インフルエンザや新型インフルエンザによるパンデミックの到来と大騒ぎするものだから、これは商機とウィルス対策を施した商品やら技術開発がマスコミに登場します。先日はS化粧品とN紡績のウィルスカットマスクに噛み付きましたが、昨日の新聞紙上ではD紡績が鳥インフルエンザに効く画期的な不織布を開発とか。私に言わせればチャンチャラおかしい無意味な開発です。
レッキとした一部上場の会社が国立大学と共同開発したものですから決してインチキではありません。そんじょそこらに溢れ返る体験談だけの怪しげなものではありません。それでも無意味な開発だ。国立大学の教授といえども知識だけの専門バカだと言いたいのです。少々長くなりますがおつきあい下さい。私は技術士受験対策講座の講師を務めています。大学教授(博士)が今さらなぜ技術士なんか受験するのだろうかと思うのですが、大学教授の受講生が少数いらっしゃいます。しかもその方々の合格率が必ずしも良くない。講師よりも受講生の方がはるかに専門知識が豊富なのにです。これは一流企業の開発畑を歩いてきた人にも言えます。自分が研究してきたことには非常に詳しいのですが、その専門をホンの少しでも離れると全くわからなくなる人がいる。それも繊維という範疇の中で、かく言う私も不織布以外の織や編み紡糸のことはサッパリなのですが。中小企業で専門のことはそれほど深くないが、製造も研究も販売も一人でこなしてきた人がすんなりと技術士の試験に通ることが多いのです。脱線はこれくらいにしておいて。
なぜ鳥インフルエンザに効く不織布開発が無意味なのかというと、抗菌剤を必要以上に使いすぎるということはさておいたとしても、抗菌不織布の使い方としてどういう場面を想像しますか。こういう想像力の欠如です。
ウィルスは身体内部に着床した後増殖するのです。空中に浮遊したり、衣服に着いたウィルスはそのままでは何もできないのです。ならば外出から帰ると衣服を着替える。これだけでよいのです。鼻から吸い込んだウィルスを増殖させないために咽喉を健康に保つ。これが重要なのです。口呼吸は鼻や上気道という関門をパスして直接下気道から肺につながるため危険です。口呼吸防止のためのマスクには意味があります。これにも抗菌剤は不要です。一流メーカが作る抗菌繊維製品はビルトインだとかいう難しい手法を用いたり洗濯脱落防止だとかのために固着材だの何だのという抗菌抗ウィルス以外の薬剤を多く使います。肌に対する刺激を和らげるための薬剤も使用します。ここで本当に必要な抗菌剤はどれくらい着いているのかと心配になります。そんなわずかばかりの薬剤が着いただけで抗ウィルス製品となります。そうなんです。それほどウィルスとは弱いものなのです。真菌類といわれるカビではこうは行きません。もっともっと恐ろしい薬剤を使わないとカビは退治できない。だから防カビ衣料なんて無いでしょう。
どうしても抗菌グッズで身を覆いたいなら、もっと良い方法があります。お茶のカテキンでもカニ殻のキトサンでも、身体に付着しても安全な抗ウィルス剤を洗濯リンスとして使えばよいのです。メーカが付着させるよりもはるかに多い量をくっ付けることができます。カテキンなら茶色く染まってしまうし、キトサンなら溶かしている溶剤としての酸が問題となりますが、それでも安全だし繊維表面に付着しているので効果もあります。ただしそんなリンス剤はどこにも売っていません。私に資力があればそんな製品開発したいなというところです。
だから抗菌グッズに惑わされること無く、手洗いは普通の石ケンで、マスクも安物で、うがいもしたければ普通の水かぬるま湯で、を心掛けて欲しいと思います。
以下は宣伝になるので、まずければ削除してください。
こんな私の主張
インフルエンザ対策は
外出から帰るとまず着替え、それから手洗い洗顔
咽喉の保温と加湿のためのおやすみマフラーと水マスク
うがいはお茶でグジュグジュゴックン
寝る前の踏み段昇降300段
に賛同しておやすみマフラーと水マスクを取り上げるe-shopが出てきました。

私は五ヶ月の娘がいる母親ですが、赤ちゃんが生まれて初めて自分がいかに余分な石鹸・抗菌グッズの類を、意識しないで使っていたか気がつきました。うちの娘は生まれたときから石鹸をいやがっていて、しかも石鹸で洗った部分だけに!湿疹が出てきたので、以来ほとんど石鹸は使っていません。お風呂のときにガーゼでぬぐうだけです。でもお肌はつるつるです。不織布の話題から離れてしまって申し訳ありませんが、私たちは「清潔」に関して無意識に脅迫的な思い込みをしているなぁと思っていたことが、研究者さんの投稿と共通するかなと思い、レスさせていただきました。