II.調査研究
3.成績
D.HI抗体価によって見た小学校のインフルエンザ流行
2)欠席率と感染率の関係
各期流行における欠席者と感染者の関係を見たものが〔表15〕および〔図12〕である。
まず〔表15〕において,左から流行期間,流行株,そして被検者数を示した。被検者数は,流行のあったことが確かな学校についてのみ対象としたものである。1983年12月〜84年2月のAH1N1型流行において,指定校5校のうち笂井小では,感染者は僅かに2人であったので対象から除いた。
その次の欄に,「欠席した者」と「欠席しなかった者」,そしてそれぞれの内の「感染者」の数を示した。この場合欠席者数は,流行期間内に一回でも欠席したことのある者については,インフルエンザにより欠席したものと見なして算出した。なお,調査対象学年には学級閉鎖はなかった。
感染者数は,その流行を挾む11月と翌年の5月の抗体価において,4倍以上の抗体価上昇を見た者をもって算出した。
上記の数値を元に算出した欠席者率その他の種々の割合は,%をもってその右の欄に並示してある。
さて,欠席者と感染者の関係を図示すると〔図12〕のごとくなる。この図から言えることは,小学校の欠席率が5%を越えるような,誰にでもかなりの流行として感じられる中規模以上の流行でも,感染者は欠席者の60%〜70%を占めるに過ぎない。小規模ないしはだらだらとした流行の場合には,その割合はさらに小さくなる。感染しながら欠席しなかった者の割合は,不思議なことに各期流行とも全体の20%前後と大差はないが,これを〔表15〕の一番右の欄に示した「不顕性感染者率」によって見ると,前述の中規模流行では感染者の35〜45%,小規模流行では60%前後と言うことになる。これら全体の2割前後を占める不顕性感染者の存在は重視すべきであり,学校でウイルスをばらまいている可能性が高く,ウイルス伝播に重要な役割を果たしていると考えられる。流行回数が少ないために,確定的には言えないが,感染者率と不顕性感染者率の間にはある程度逆相関の関係があることが窺われる。
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