II.調査研究
3.成績
D.HI抗体価によって見た小学校のインフルエンザ流行
4)感染既往と感染率
(iii)B型について

B型は,1982年1月〜3月と1985年1月〜2月に流行があった。調査開始前,即ち1980年3月〜5月にB型流行があったので,1981年11月の「既往あり」は,この時の感染によるものと思われる。従って,1982年1月〜3月の流行は,前回より2年後ということになるが,その際の感染率は既往ある者33.6%,ない者59.4%であった。そして,更に3年後の1985年1月〜3月流行において,1982年に感染した者の感染率36%に対して,感染しなかった者57%であった。

この時の流行について,感染既往別に感染率,欠席率,発熱率を見たのが,〔図16〕である。それぞれの群に占める欠席率,発熱率には差が認められなかった。

尚,B型について,以前の感染と次の流行との関係を〔図17〕に示した。これは,〔図15〕の一部を分かり易いように数値を入れて書き改めたものである。

一つのモデルとして,きわめて分かりやすい関係を示している。もちろんこれをもってすべての型の,またすべての時期の流行に当てはめるわけにはいかないが,基本的な関係を暗示するものとして適当と考えるからである。

被検者数は506人で,「既往あり」と「なし」が概ね半々に分かれた。被検者すなわち対象児童が小学一年生以前にB型流行に暴露した可能性は,2歳の時のB型流行,5歳の時のA1,A3,B型の三種混合流行,そして一年生の時にA1型とA3型流行に続く3月中旬から5月中旬にかけてのB型の小流行があるが,恐らくは5歳時の流行による影響がもっとも大きいと考えられる。

その2年後の小学2年生の時の流行,さらにその3年後の5年生の時の流行における感染の有無によって分けた各群の感染率は〔図17〕の通りである。

すなわち感染既往の有無によって分けた各群の感染率は,それぞれ「なし」において59.4%,「あり」において33.6%であった。さらにその次の流行において,二つの群の感染の有無によって分けた各群の感染率は,前回感染しなかった者についてはそれぞれ56.7%と57.2%とほとんど差はなく,前回流行において感染しなかったことの重要性を示した。また前回流行において感染したが既往なしの者では41.1%,前回感染し既往もありの者では26.2%と,感染を繰り返すに従って感染率は低くなる傾向が認められた。

既往・感染共にありの者の感染率は,前回感染なしの者の半分以下の感染率であった。しかし2年生の時と5年生の時の前回感染の有無による感染率の比は,集団全体として見ればいずれも概ね5:3の割合であった。ちなみに二つの時期の流行における全体としての感染率は46.6%に対して47.2%と両者に大差はなかった。防御率は43.4%に対して36.8%とわずかに6.6%の差にすぎなかった。

これらの関係はすでに述べて来たことであるが,比較的ウイルスの変異性が少ないとされるB型であればこそ,このようなはっきりとした関係が見られることになったのであろう。しかしA型の場合でも基本的にはこのような関係があるが,流行ウイルスの抗原変異により修飾を受けやや複雑な変動を見せるのであろうと考えられる。

いずれにせよ子どもたちが,インフルエンザに対する免疫を獲得してゆく様子をこの図から見ることが出来よう。


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