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〔資料3〕
荒牧小におけるインフルエンザ様疾患の流行状況と学級閉鎖に関する調査研究


前橋市立荒牧小学校 宝田知恵子(養護教諭)
鈴木政子(校医)


I. はじめに

本校は前橋市インフルエンザ研究班の指定校の一つで,インフルエンザの流行状況には格別の関心をもって対応して来た。

1985年1月に全校22学級のうち17学級が閉鎖する大きな流行があった。

学級閉鎖の処置は,欠席率や出席している児童の有熱状況および学校全体の流行状況などを検討した上決定される。ところが閉鎖あけ時点の状況はいぜんとして欠席率が高いクラスもあれば0%になったクラスもあり,効果は一様でない。これはいったん閉鎖してしまうと,その期間中の罹患状況を把握することがむずかしく,適確な対応をしきれない現状を示していると思われる。

そこで,今回の流行時における欠席および発熱のようすを調査し,どのような流行であったかを把握するとともに,今后の学級閉鎖処置を有効にするため検討したので報告する。

II. 調査対象と方法


  1. 調査期間 1985年1月14日(月)から2月9日(土)までの27日間

  2. 全校児童(在籍800名)を対象に,毎日の欠席しらべを資料として欠席率を調査した。インフルエンザ様疾患による欠席をできるだけ正確にするため,明らかな事故欠席や他の疾病による欠席は除外した。

  3. 調査期間中に発熱を伴う感冒症状のあった児童を対象に表1の調査用紙を配布し,保護者に記入してもらって集計した。


III. 結果

1. 全校の状況

(1) 学校内流行の経過と欠席率(図1

1月17日(木)に全校欠席率が2%をこえ,流行のきざしが見られた。19日(土)に4%となり,21日(月)に11.9%と急上昇して2学級に閉鎖処理をとった。22日(火)は,閉鎖2学級を除く在籍721人に対し欠席119人,欠席率15.5%とピークに達し8学級が閉鎖対象となった。その后も30日(水)まで欠席率は13〜15%で続き,閉鎖クラスは合計17となった。2月に入って急速に欠席率は下降し,10日(日)11日(月)の連休のあとほぼ終焉した。

(2) 欠席率と有熱率の関係(図1

調査用紙により37.5℃以上の有熱者をしらべ有熱率を点線で示した。流行のピークに至るまでは欠席率と有熱率はほぼ一致しているが,ピーク后は欠席率に比べ有熱率はかなり低くなっている。これは病気の急性期の特徴である発熱が終っても咳や全身倦怠などの症状が残り体力回復のため欠席している状況であると推察された。

2. 学年別流行状況

(1) 学年別罹患状況(表2

発熱を伴う感冒様症状を呈した児童は各学年ともほぼ半数以上あった。特に1,2年の低学年で高率であった。

(2) 欠席率と有熱率(図2

欠席率は1,2年生が65%と高く,6年生は41.6%で最も低かった。有熱率は1,2年生が50%を超え,6年生は37%であった。4年生は有熱率が欠席率を上まわっていた。これは発熱していても登校した子,登校してから発熱に気づいた子,あるいは下校后に発熱した子などが含まれると推測された。

(3) 有熱期間(図3

有熱期間は最短1日から最長8日までに分布していた。1〜5年生では2,3日が最も多かったが,6年生では4日にピークがみられた。

(4) 最高体温(図4

最高体温が39℃以上の高熱であった割合が最も高かったのは1,2,3,4年生であった。特に有熱率の高かった1,2,4年でその傾向が著明であった。5,6年生ではばらついていた。

一般にインフルエンザは38℃以上の発熱を診断のめやすとしている。学校の現場では児童の平熱を37.3℃までと考えているので,今回の調査では37.5℃以上を有熱者として扱った。従って本調査における最高体温37.5〜37.9℃の児童がインフルエンザであったか,類似疾患であったかは議論となるであろう。

(5) 欠席と発熱の関係(図5

図5は0線の上段に欠席率,下段に出席率を棒グラフで示し,各々に占める有熱率を斜線で表わしたものである。欠席者の半数以上は有熱であるといえる。最も有熱率の高いのは5年3組(90%),最も低いのは2年1組(42%)であった。出席者の中で有熱のものが少数いるが,これは有熱にもかかわらず登校して来たものと,登校后に発熱に気づいたものであり,有熱者の95%は欠席していた。

3. 学級別流行状況

(1) 流行のひろがる様子(表3

各学級の欠席率のピーク日を図6よりひろい一覧表に示した。1月21日(月)に2年1組が欠席率26%,6年2組が29%でピークとなり学級閉鎖した。その后26日(土)までに17学級が欠席率のピークを迎え閉鎖した。2年2組は22日に欠席率22%でピークと判断し閉鎖処理をとったが,閉鎖あけの28日に25%となっていた。学年,校舎,出入口による流行の流れは論じることができなかった。

(2) 閉鎖中の流行状況(図6

調査期間中の罹患状況を調査用紙により発熱その他の臨床症状から把握しようと試みた。図6では各学級ごとに欠席率を実線で,有熱率を点線で示し,学級閉鎖開始日と解除日を欠席率線上に○で示した。

閉鎖とともに有熱率が低下し,新たな罹患者が少なく,閉鎖あけには有熱者のないクラス(1年3組,4年4組,6年1,2,3組)がある一方,閉鎖后も有熱者が増え続け,閉鎖あけに欠席率があまり下っていないクラス(1年1,2組,2年1組,3年3組,4年2組,5年3組)もあり,閉鎖あけにかえって欠席率が上昇しているクラス(2年2組)もあるなど,学級閉鎖中の流行はクラス毎にかなりばらつきが見られた。

(3) 閉鎖しなかったクラスの状況

図5)に示すように,閉鎖しなかったのは4年1,3組5年1,2組の4クラスであった。4クラスとも欠席率のピークは閉鎖の基準とされる20%を超えていた。5年2組は1月25日(金)に33.3%に達している。また期間中の欠席者率が4年3組は66.7%,5年2組は55.5%と高くなっている。

これら4つのクラスで閉鎖を行わなかった事情は同一ではない。5年2組では1月25日(金)に33.3%欠席率であったが翌日まで様子をみることにしたところ20%以下に下ったためである。4年3組はだらだらと欠席者の多い日が続いたが欠席率20%をこえた日はすで学校全体として終焉しており,クラスの3分の2が罹患したあとなので,これ以上高率になる心配はないと判断したためである。4年1組と5年1組は,欠席率22%となったが1日様子をみたところそのまま低下したものであった。

4. 学級閉鎖による欠席率の変化

(1) 閉鎖日数と欠席率の変化の関係(図7

閉鎖日数は4〜6日であった。4日間閉鎖が5クラス,5日間が10クラス,6日間が2クラスである。閉鎖日数にかかわりなく1例を除いてすべて閉鎖あけには欠席率の低下がみられ効果が認められた。閉鎖期間の長短による効果の差ははっきりしなかった。

(2) 学級閉鎖開始時期と欠席率の変化の関係(図8

図6の有熱率曲線のピークをそれぞれのクラスの真の流行ピークと見做しこのピーク日と閉鎖開始日との関係を次のようなA,B,Cに分類して閉鎖あけの欠席率の変化を比較した。

A:有熱率のピークが閉鎖中にある(6クラス)
B:有熱率のピークが閉鎖の前日にある(8クラス)
C:有熱率のピークが閉鎖の前々日あるいはそれ以前にある(3クラス)

Aは閉鎖開始時点での欠席率がB,Cに比べてやゝ低く,閉鎖あけの欠席率低下があまり著明でない。B,Cでは閉鎖開始時の欠席率がかなり高く,閉鎖あけの欠席率低下が顕著にみられた。

IV. まとめと考察


  1. 本校における今回の流行は1月中旬から2月上旬にかけて比較的短期間に多発し,22学級中17学級が閉鎖し,ピーク時の全校欠席率15.5%と高かった。

  2. 1年,2年生で欠席率,有熱率ともに高く,他の学年に比べて激しい流行であった。

  3. 37.5℃以上の有熱率でみると,発熱の期間は2〜3日が多く,最高体温では1,2,4年生で39℃以上の高熱者の比率が高くやゝ重症であった。

  4. 欠席率と37.5℃以上の有熱率をみると有熱者の95%は欠席しており,欠席者の70%は有熱の状態であった。

  5. 閉鎖の期間は4,5,6日の何れでも欠席率を低下させる効果はほぼ同様であった。

  6. 閉鎖をはじめる時期についてはクラスの欠席率が20%をこえると同時に閉鎖したクラスでは閉鎖あけの欠席率低下が不充分であった。

  7. 閉鎖をした場合,何らかの方法で閉鎖翌日の有熱率を把握し,前日より上昇している時は,閉鎖あけの欠席率低下が期待薄である。

  8. 学級閉鎖を効果的に実施するには,クラスの欠席率が20%をこえた時点から1日待って,判断するのが適当と思われた。


インフルエンザは年ごとに流行のパターンが違うので今回の流行からの推測で律せられないのは論をまたない。

何よりも常日頃から健康教育として心身の健康を鍛える学習と鍛練をつみ,年毎に積極的,且つきめ細かい予防対策を心がける必要があろう。

 
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