近年、インフルエンザに続く脳症(ライ症候群)が、ある種の解熱剤によって起こる可能性がしめされました。これによって、インフルエンザが疑われる発熱時に使用すべき解熱剤は、種類を限定し慎重に使用されることになりました。このようなガイドラインが示されると、「解熱剤によって脳症が起こるのは、むやみに熱を下げるからだと」単純に思い込みがちです。しかし、その短絡的な思い込みには矛盾があったのです。もしも、解熱をすることが脳症の直接的原因ならば、すべての解熱剤が使えないことになります。しかし、解熱剤であるアセトアミノフェンなどは禁忌(使用できない)ではありません。この矛盾はどういうことなのでしょう。著者はこのような仮説を述べています。解熱剤には他に「鎮痛」と「消炎」の作用があるが、この消炎(炎症を鎮める作用)が問題なのではないか。解熱剤には解熱鎮痛だけの作用のものと、消炎作用をあわせもつものがあるのですが、ライ症候群と関係するのは後者のほうです。ところで、炎症反応には、(1) 感染した部位に免疫を集中させる。(2) 血流を鈍らせウイルスの流出を鈍くする。という作用が期待されます。薬物によって炎症が抑制されると、ウイルスにとっては有利な環境になるというのですね。さらにインフルエンザウイルスは発熱した環境でもあまりダメージを受けないといいます。これをさかさまに考えれば、インフルエンザにおいて、発熱は防御反応になっておらず、この作用を抑えても、病状の悪化にはつながらないというわけです。インフルエンザと解熱剤と脳症の関係は、ただしくは消炎剤(抗炎症剤)作用のある薬に注意すべきということになり、発熱のコントロールが問題ではないという仮説になるわけですね。
まつ です。こんにちは。いろいろあるのですが、まず1点だけ教えてください。> さらにインフルエンザウイルスは発熱した環境でもあまりダメージを受けないといいます。これは、本の内容でしょうか? それ以外からの情報でしょうか?発熱してもウイルスがダメージを受けないとしたら、体はなんのために発熱しているのでしょうか? 素朴な疑問ですみません。
> > さらにインフルエンザウイルスは発熱した環境でもあまりダメージを受けないといいます。> > これは、本の内容でしょうか? それ以外からの情報でしょうか?本の内容からです。病原体進化論にあったものです。この場合のウイルスとはインフルエンザウイルスに限定した話であったと記憶しています。> 発熱してもウイルスがダメージを受けないとしたら、体はなんのために発熱しているのでしょうか? 素朴な疑問ですみません。まず、感染の場合、発熱も含め一連の反応は、敵に有効かどうかに関わらず、まるで作法にように、定形の反応をするのではないかと考えられます。また、発熱そのものが有効でなくても、発熱の刺激によって身体に二次的に起こる(リンパ球の活性化など)変化等がありますから、ウイルスに直接有効でない対応でも、必要だと考えることができます。