栗原さん、ありがとうございます。話題がずれてしまうので、別スレッドに分けました。元スレッドは No.568 「NHK・BSディベートアワー」です。> 番組最後の予防接種の議論のところで、竹田前感染研所長が毎年数百名の子どもが亡くなると発言されていましたが、一桁間違っていると思い、3月1日厚労省結核感染症課情報室長加地さんに確認したら80名程度ということでした。この80という数字は良く見かけますね。たしか、感染症情報センターによる推計値だったと記憶しています。以前、出典を探してみたのですが、見つけることができませんでした。一方、人口動態統計という統計のなかにも原因別の死亡者数があります。ちなみに、この統計は厚生労働省が作成しています。感染症情報センターの数字がサンプルをもとに作成された推計値(だったと思う)なのに対し、人口動態統計は死亡診断書を元に集計される全数調査です。全数調査とは、全ての情報をカウントしたものなので漏れはなく、一番信頼できる統計の部類に入ります。で、人口動態統計で調べると、麻疹による死亡者数は毎年20人程度と、ぐぐっと水準が下がります。さらに、20人のうち半分近くは大人が占めているので、子供の死亡者数は10人ちょっとにまで減ります。ただし、人口動態統計による麻疹の死亡者数は過小にカウントされているとも言われています。それは、麻疹にかかったあと肺炎になって死亡したときに、死亡診断書の死因に「肺炎]と記入するケースが考えられるからです。しかし、この理由で本当に10数人が80人にまで膨れ上がってしまうのでしょうか? 一方、感染症情報センターの推計方法・根拠・推計時期など全く分かりません。そのため、どうしても「80」という数字が一人歩きしているような気がしてならないです。そして、人口動態統計の数字の方が実態に近いのではないか、と想像しています。80という数字は、どの程度根拠のあるものでしょうか? みなさんは、どう思われます?
追加です。> ただし、人口動態統計による麻疹の死亡者数は過小にカウントされているとも言われています。それは、麻疹にかかったあと肺炎になって死亡したときに、死亡診断書の死因に「肺炎]と記入するケースが考えられるからです。ここのところは重要なので、もうちょっと詳しく書きます。死亡診断書の「死亡の原因」欄は、以下のような構成になっています。I (ア) 直接死因 (イ) (ア)の原因 (ウ) (イ)の原因 (エ) (ウ)の原因II 直接には死因に関係しないがI欄の傷病経過に影響を及ぼした傷病名等例えば、麻疹にかかったあと肺炎になって死亡した場合は、 (ア) 肺炎 (イ) 麻疹のようになると思われます。そして、人口動態統計で採用する死因は、「原死因」と定義されています。つまり、I直接死因の(ア)〜(エ)までのうち、一番下の欄に記載されている傷病名です。上のケースなら、肺炎ではなく麻疹です。ですから、> しかし、この理由で本当に10数人が80人にまで膨れ上がってしまうのでしょうか?こうした疑問が湧き上がってくるわけです。麻疹が原因で死亡したときに、その事実に到達できず、(ア)の欄に「肺炎」などと記入してしまうケースが、一体どれくらいあるというのでしょうか。死亡診断書が、そんなにも適当に作成されているとは思えないのです。> そのため、どうしても「80」という数字が一人歩きしているような気がしてならないです。そして、人口動態統計の数字の方が実態に近いのではないか、と想像しています。ここは、「どちらかというと」みたいな書き方になっていましたが、本当は、80という数字は相当の過大推計になっていると考えています。
> ここは、「どちらかというと」みたいな書き方になっていましたが、本当は、80という数字は相当の過大推計になっていると考えています。この80人という数は確かによく聞きますね。ちょっと調べてみても小児科のサイトでこの数字が出てきたりしますし。どうも「80人が年間に亡くなっています」と聞くと子供が年間80人麻疹で亡くなっているような感じがしていました。そうではないかもしれませんね。それにしてもこれって何年のデータなのでしょう。ちょっとうろ覚えなんですが、確か沖縄県での死亡者数を元に全国で出しているのではなかったでしたっけ?そして、もしかしてもしかすると大発生した時の人数だったりして。。。だとするとたまたま大発生した時の人数を元にしたというのだったらなおさらこの数字はう〜む、ということになります。ということは、この80という数字が独り歩きして余計に不安をあおっているような感じがするということでしょうかね。
こんばんは、さ@かなです。下の子が歯の生えはじめだからか、非常に機嫌が悪いです〜。やっと寝てくれた隙に…。麻疹関連のまとまったデータはここにありましたが、ご存知でしたでしょうか?●麻疹の現状と今後の麻疹対策について(国立感染症研究所 感染症情報センター)http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/12/s1213-5d.html80人(88例)の数字の出し方については、こちらに解説がありました。恐らくこの数字が一人歩きしているのではないでしょうか?●医学書院/週刊医学界新聞 第2509号 2002年11月4日http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/12/s1213-5d.html私も、今検索して知ったので、これからじっくり読んでみます。
tomopさん、さ@かなさん、ありがとうございました。> 80人(88例)の数字の出し方については、こちらに解説がありました。> 恐らくこの数字が一人歩きしているのではないでしょうか?> ●医学書院/週刊医学界新聞> 第2509号 2002年11月4日> http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/12/s1213-5d.htmlURLは↓ですね。http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2002dir/n2509dir/n2509_05.htmここで対象となっている沖縄県での麻疹流行というのは、「情報源」の「麻疹」のところに掲載されている資料のものですね(「1998〜1999年に起こった沖縄県での麻疹流行」)。この資料は、個人的には、(1)ブースターが得られないときの麻疹ワクチンの抗体価持続性、(2)麻疹ウイルスの変異の可能性、という点で、とても示唆に富んでいると思います。死亡率を試算している元論文にはアクセスできませんでしたが、これだけの情報があればもうちょっと調べることができそうです。
栗原さんから下の方に○ 過去20年間に麻疹が死因として報告された死亡者数http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/03/s0328-2a.html#siryou1これを見ると一番多い1988年頃の人数ですよね。最近は30〜40名ほどに減っていますね。
こんにちは。> 死亡率を試算している元論文にはアクセスできませんでしたが、これだけの情報があればもうちょっと調べることができそうです。調べてみました。最初に、統計分析を行ううえでの注意点をひとつ。特定の数値を推計するには、なるべく信頼すべき統計をベースにしなければなりません。とある流行時の情報だけから全国ベースの推論をしてしまうと、その流行の特殊性を増幅するリスクが大きくなります。幸い、今回のケースでは、「人口動態統計」という全国民を対象とした統計があるので、この統計を利用することを第一に考えるべきでしょう。さて、沖縄県で麻疹流行があったのは、1998年8月から1999年9月までの1年間です。人口動態統計を調べると、沖縄県で麻疹が原因で亡くなった人の数は、1998年に1人、1999年に3人と記載されています(ちなみに1995〜1997年はゼロ)。一方、「1998〜1999年に起こった沖縄県での麻疹流行」によれば、そのときの麻疹患者数は2,034人、死亡者数は8人。この論文の数字をベースにすれば、8人の死亡者のうち、4人は死亡診断書が正しく作成され、人口動態統計にカウントされている、と推論できます。つまり、死亡診断書が正しく作成されている割合は50%。したがって、一番信頼すべき人口動態統計から実際の麻疹死亡者数を点推計するには、だいたい2倍すればよい、ということになりそうです。年間20人くらいですね。ここで注意しなければいけないのは、推計元となっている麻疹流行が沖縄県(とりわけ離島地域)という狭い地域に集中しているという特殊性です。つまり、このケースでは、麻疹対応に関わった病院・医師の数も少ないはず。とすれば、たまたま死亡診断書を正しく作成しない1人の医師が、人口動態統計にカウントされていない4人の主治医だった、という可能性も考えられます。もしそうであれば、死亡診断書が正しく作成されている割合がもっと高くなり、実際の麻疹死亡者数も人口動態統計に近い数字にまで下がってきます。もちろん、逆の可能性もありますが、「たまたま死亡診断書を正確に記載する医師が多かった」なんて考えたくないですよね。。。なお、さ@かなさんが教えてくれた週刊医学界新聞のページでは、死亡者が9人と1人多くなっていますが、これは2001年の1人が含まれているからと思われます(人口動態統計にもカウントされています)。ここで、改めて驚くのは、1998年から1999年にかけての沖縄県での麻疹流行時の死亡率の高さです。患者数2,034人に対して8人も死亡したということは死亡率0.4%と計算されます。これは、これまで私が目にしたどの死亡率の数字よりも高いものです。一体なぜでしょうか?<結論>1. どうやっても、年間80人という死亡者数は導き出されない2. 沖縄での麻疹死亡率は非常に高かったので、むしろその原因を追及すべき
> <結論>> > 1. どうやっても、年間80人という死亡者数は導き出されない> > 2. 沖縄での麻疹死亡率は非常に高かったので、むしろその原因を追及すべきみごとな分析をいつもありがとうございます。とりあえず感想です。
くじらです。こういう風に分析するのか〜と尊敬して、なぞってみたのですが、最初からつまずいてます。まつさんに質問です。> 最初に、統計分析を行ううえでの注意点をひとつ。特定の数値を推計するには、なるべく信頼すべき統計をベースにしなければなりません。とある流行時の情報だけから全国ベースの推論をしてしまうと、その流行の特殊性を増幅するリスクが大きくなります。幸い、今回のケースでは、「人口動態統計」という全国民を対象とした統計があるので、この統計を利用することを第一に考えるべきでしょう。間違っていたらご指摘くださいませ。●医学書院/週刊医学界新聞 第2509号 2002年11月4日http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/12/s1213-5d.htmlで見ると、全国民を対象とした統計したものではなく、沖縄の多かった人数を元に全国平均出してますよね。そうすると○ 過去20年間に麻疹が死因として報告された死亡者数http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/03/s0328-2a.html#siryou1の数字に近いような気がします。麻疹にかかっても、定点で観測している病院でない病院で治療してカウントされなければ「0」。定点観測している病院で治療しても間違えて正しい報告でなければ「0」(信じたくないですけどね)「人口動態統計」http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii01/index.htmlで見たのですが、「沖縄の麻疹の人口動態統計」ってどこに出ているのでしょう〜。これさえもどこ見ていいのか分かりません(汗)> > さて、沖縄県で麻疹流行があったのは、1998年8月から1999年9月までの1年間です。人口動態統計を調べると、沖縄県で麻疹が原因で亡くなった人の数は、1998年に1人、1999年に3人と記載されています(ちなみに1995〜1997年はゼロ)。一方、「1998〜1999年に起こった沖縄県での麻疹流行」によれば、そのときの麻疹患者数は2,034人、死亡者数は8人。この論文の数字をベースにすれば、8人の死亡者のうち、4人は死亡診断書が正しく作成され、人口動態統計にカウントされている、と推論できます。つまり、死亡診断書が正しく作成されている割合は50%。したがって、一番信頼すべき人口動態統計から実際の麻疹死亡者数を点推計するには、だいたい2倍すればよい、ということになりそうです。年間20人くらいですね。沖縄県衛生環境研究所報 第34号(2000年版)http://www.c-okinawa.co.jp/eikanken/syoho/shoho34/shoho34.htmのPDFでは人数出ていましたけど、「人口動態統計」ではないですよね。「沖縄の麻疹の人口動態統計」ってどこに出ているのでしょう〜。すみませ〜ん。
こんにちは。> ●医学書院/週刊医学界新聞> 第2509号 2002年11月4日> http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/12/s1213-5d.html> で見ると、全国民を対象とした統計したものではなく、沖縄の多かった人数を元に全国平均出してますよね。すみません、どこの部分でしょうか?「2)国内の麻疹による死亡者」では、人口動態統計が使われているようです。> ○ 過去20年間に麻疹が死因として報告された死亡者数> http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/03/s0328-2a.html#siryou1> の数字に近いような気がします。これも人口動態統計ですね。> 麻疹にかかっても、定点で観測している病院でない病院で治療してカウントされなければ「0」。定点観測している病院で治療しても間違えて正しい報告でなければ「0」(信じたくないですけどね)これは、麻疹の死亡者数を過小推計しているケースですね。当然、逆に過大推計している可能性も考えられます。一般論でいえば、定点観測地点数は多いので、それほど大きな誤差は生まれないはずです。ただし、定点観測として採用している病院に偏りがある可能性は考えられます。例えば、大病院は必ず採用されているでしょうから、麻疹の死亡者はかなり補足できているはず(重症化すれば大病院に転送されることが多いから)。一方、感染しても軽快した人は、近所の小さな病院ですますでしょうから、なかなか捕捉できません。ですから、定点観測から割り出される、感染者数と死亡者数の関係(死亡率)の解釈が難しくなります。> 「人口動態統計」> http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii01/index.html> で見たのですが、「沖縄の麻疹の人口動態統計」ってどこに出ているのでしょう〜。ホームページ上でアクセスできるのは、ごく一部ですね。どうしても調べたいのであれば、国会図書館や大学の図書館などに大元の統計集があると思います。3分冊になっていて、下巻の「第8表 感染症による死亡数、死因・都道府県別」に掲載されています。これを各年ごとに調べます。集計する際の注意点としては、1990年代の終わりごろに、それまで「麻疹」ひとくくりだったのが、「麻疹(成人麻疹を除く)」と「成人麻疹」に分けられるようになったことです。